近年、ECとSNSの融合が急速に進んでいる中、注目を集めているのが「ライブコマース」です。とくにTikTokが世界各地で展開している「TikTok Shop」が2025年、日本にも本格上陸すると報じられ、国内のライブコマース市場にも変化の波が訪れようとしています。
この記事では、ライブコマースの現状、今後の展望、TikTok Shopの特徴、そして成功事例を通じて、ライブ販売の可能性を多角的に解説します。
日本におけるライブコマース市場の急拡大
日本のライブコマース市場は2024年時点で約1,900億円に成長し、2030年には1兆円規模に達すると予測されています(Grand View Research調べ)。特にアパレルや美容、食品などの分野での活用が目立ち、リアルタイムで商品を紹介・販売するスタイルが若年層を中心に支持を集めています。
TikTok Shopとは何か
TikTok Shopは、動画視聴から商品購入までをアプリ内で完結できるショッピング機能です。インフルエンサーやブランドが、ライブ配信や投稿動画で商品を紹介し、視聴者はその場で購入できます。
この仕組みは、コンテンツとコマースのシームレスな統合を実現し、視聴体験そのものが購買動機に直結する点が大きな特徴です。
成功事例から見るライブコマースの実力
1. 【中国】李佳琦(Austin Li)
中国で最も成功したライブコマースの代表格。1回のライブ配信で数億円を売り上げることも珍しくなく、L’OréalやYSLなど大手化粧品ブランドと連携し、実演形式で商品の魅力を伝えながら販売しています。
ポイント:
- 商品の使い方を視覚的に見せる
- 即時回答で視聴者の不安を解消
- 限定オファーやタイムセールによる即時購買促進
2. 【アメリカ】TikTok x Walmart
米ウォルマートはTikTokと連携し、フォロワー数百万人を持つインフルエンサーが自社商品の紹介を行うライブ配信を実施。視聴者はリアルタイムでコメントし、ワンクリックで購入可能という仕組みで、若年層向けの購買層開拓に成功しました。
ポイント:
- ターゲット層に合った配信者の起用
- ブランド公式アカウントではなく“人”を前面に出した構成
- 配信後もリプレイで売上が継続
3. 【日本】ロフト x HandsUP
ロフトがEC支援ツール「HandsUP」を使ってライブ配信を行い、新商品や季節限定品のプロモーションを実施。実店舗スタッフが登場し、リアル店舗さながらの雰囲気で接客を再現し、売上を伸ばしました。
ポイント:
- 実店舗と同様の“接客力”をライブに転用
- 商品への愛情や説明力が購買動機に直結
- イベント的な盛り上げ方で集客に成功
今後のライブコマースの方向性
- エンタメ化の加速
商品紹介にゲーム性やバラエティ要素を加えることで、視聴者の滞在時間を延ばし、購買意欲を自然に高める手法が主流に。 - データドリブン運用
配信中の視聴データや購入率をもとに、配信時間や商品選定を最適化する動きが強化されている。 - マイクロインフルエンサーの活用
フォロワー数は少なくても信頼度の高い「コミュニティ密着型」の配信者が、購入率の高い層を持つことから、より注目されるようになっている。
TikTok Shop参入への備え
TikTok Shopを活用するうえで重要なのは、商品力や価格だけではなく、「誰がどう売るか」「どう魅せるか」です。
- インフルエンサーとのコラボ戦略
- 商品ごとのライブ演出設計
- プロモーション前後のSNS運用戦略
これらを一体化して考えることが、ライブコマース成功のカギとなるでしょう。
まとめ
ライブコマースは、単なる動画付きECではありません。視聴者とのリアルタイムのやりとりを通じて、「信頼」「共感」「体験」を積み重ねながら商品を届ける新しい流通のかたちです。
TikTok Shopの日本上陸は、こうしたトレンドをさらに加速させるでしょう。いまこそ、動画時代に対応した販売力のアップデートが求められています。