若者に刺さるメディアの作り方とファンビジネスの可能性
はじめに
近年、ただ情報を発信するだけではなく、ユーザーとの関係性を重視する「コミュニティメディア」の重要性が高まっています。中でも、Z世代を中心に爆発的な支持を得たのが、株式会社yutoriが手がけた「古着女子」というInstagramメディアです。本記事では、yutoriの取り組みをもとに、コミュニティメディア戦略の核心とビジネス展開の方法を解説します。
コミュニティメディアとは何か
コミュニティメディアとは、情報発信をしながらもユーザーとの双方向の関係を築き、「共感」や「つながり」をベースにしたメディアのことです。従来のメディアは一方向的な情報伝達が中心でしたが、コミュニティメディアは「参加型」であり、ファンが自ら関与し、共創するスタイルが特徴です。
この戦略の強みは以下の点にあります。
- ユーザーの熱量が高く、ファン化しやすい
- リピートや口コミによる自然な拡散が起こる
- コンテンツが共感ベースで拡がりやすい
- 長期的に顧客との関係を築ける
株式会社yutoriの事例:「古着女子」の始まり
株式会社yutoriは、2018年に創業されたスタートアップ企業で、「古着女子」というInstagramアカウントから事業をスタートしました。フォロワー数は数十万人規模に達し、若年層を中心に強い影響力を持つ存在へと成長しました。
このアカウントは単なるファッション紹介ではなく、「古着が好きな女の子たちのための共感の場」として機能していました。投稿には一般ユーザーのコーディネートが紹介され、フォロワー同士のコメント交流も活発に行われていました。
このように、メディアそのものがコミュニティとして成立していた点が大きな特徴です。
コミュニティからビジネスへ:メディアのマネタイズ展開
yutoriは「古着女子」で築いたコミュニティを起点に、以下のようなビジネスを展開しました。
1. 自社ECサイトの展開
古着を中心としたオンラインショップを立ち上げ、Instagramのフォロワーを購買層へとつなげました。
2. アパレルブランド「9090」などの立ち上げ
メディアで得たユーザーインサイトをもとに、Z世代向けのブランドを立ち上げ、共感を前提とした商品展開を行いました。
3. コミュニティ主導のマーケティング
SNSでのアンケートやリアクションを活用し、ユーザーと一緒に商品開発を行うようなアプローチを採用。顧客との関係性を商品にも反映させています。
成功要因の分析
yutoriの戦略には、以下の成功要因が挙げられます。
- ターゲットを「古着好きの若年層女子」に絞った明確なポジショニング
- SNSという共感・拡散の強いプラットフォームを活用
- 一方通行の発信ではなく、参加型のコミュニケーション設計
- コミュニティの熱量を活かしたビジネスへの自然な展開
コミュニティメディアはスモールビジネスにも応用可能
yutoriのようなスタートアップが成功した背景には、大資本や広告ではなく、「小さな熱狂」を育てる姿勢があります。これはスモールビジネスにもそのまま応用できます。
- 自分の価値観や想いに共感してくれる人を集める
- 小さくても濃いコミュニティを作る
- 自分たちの世界観を発信し続ける
このような積み重ねが、長期的なファンづくりや安定した売上につながっていくのです。
おわりに
株式会社yutoriが「古着女子」を通じて実現したコミュニティメディア戦略は、現代のビジネスにおいて非常に示唆に富むものです。大量の広告よりも、信頼と共感に基づく関係性が、これからの時代のブランド価値を決めていくといえるでしょう。
スモールビジネスこそ、こうした「共感でつながるメディアとコミュニティ」を持つことで、独自の立ち位置を確立することが可能です。
株式会社yutori
株式会社yutoriは、2018年に創業されたZ世代向けのD2Cブランドカンパニーです。
Instagramメディア「古着女子」の運営からスタート。SNSを活用した共感型のマーケティングと、コミュニティを起点としたブランド戦略で注目を集めました。
代表的なアパレルブランドには、ユニセックスストリートブランドの「9090(ナインティナインティ)」や「genzai」などがあり、いずれもZ世代から高い支持を獲得しています。
2023年には、ファッションEC大手の株式会社ZOZOと資本業務提携を締結。さらに、2024年12月には東京証券取引所グロース市場に上場し、スタートアップから上場企業への大きな飛躍を果たしました。
ZOZOとの連携を通じて、デジタルとリアルを横断した次世代型ファッションビジネスを加速させています。
公式サイト:https://yutori.tokyo/